農法の基礎知識

農産物を育成する方法のことを、「農法」といいます。

穀物や野菜を栽培・収穫する場合、土地の栄養状態や水分の管理、病害虫の防除を行うことになりますが、これらの実践について、古代から現代に至るまで、様々な農法が存在しています。

歴史的に最も有名な農法としては、焼畑農法が挙げられます。

20世紀の農業は、農具の機械化や作物の品種改良、化学肥料や化学合成農薬(以下、農薬)が使用されるようになったことによって、生産力が飛躍的に拡大しました。
ちなみに、農薬・化学肥料を使用し、現在の日本で最も一般的な農法のことを「慣行農法」と言います。

慣行農法は、生産性に関しては優秀ですが、メリットだけではありません。
大量の農薬や化学肥料を長期的に使用すると、土壌の栄養過多や地下水汚染が発生する恐れがあります。

慣行農法へのアンチテーゼとして「有機農法」が登場しましたが、有機農業の単位面積当たりの収量が低いこともあり、あまり普及していません。

ただ、有機農法の考え方や手法は、勉強熱心な農業者には知られるようになり、慣行農法の実践者の一部にも影響を及ぼしています。

「農法の基礎知識」のページでは、現在の日本で実践可能な主な農法を紹介していきます。



焼畑農法


焼畑農法とは、森林や原野を焼き、樹木や草の焼却灰を肥料として農作物を栽培する方法を言います。
無肥料での耕作を何年か行い、生産性が落ちた農地を一定期間放置し、地力の自然回復後に再び焼畑する、循環的な農法です。

焼畑には、以下の機能があるとされています。
  • 草木を焼くことで、整地できる。
  • 草木灰が酸性土壌を中和し、肥料の役割を果たす。
  • 土が加熱されることにより、土壌の窒素組成が変化し、土壌が改良される。
  • 熱により、種子や腋芽が休眠から覚醒する。
  • 雑草、害虫、病原体の防除。

焼畑のデメリットとしては、山火事の危険や空気中への二酸化炭素の放出が挙げられます。
また、住宅の近くで焼畑を実施した場合、煙で洗濯物に臭いが付いたり、煙による健康被害が発生する恐れもあります。



慣行農法


慣行農法とは、世間で一般的に行われている農法のことです。

現在の日本では、農薬や化学肥料を大量に使用して農産物を栽培する、いわゆる「近代農法」が主流ですので、「慣行農法」という語は「近代農法」と同じ意味で使用されます。

地域によって気候条件が異なることもあり、慣行農法の内容には地域差があります。
そのため、農薬や化学肥料の使用回数や使用量について、全国一律に標準的な基準はありません。

慣行農法のメリットとして、以下のことが挙げられます。
  • 単位面積当たりの収穫量が多い。
  • ハウス栽培などの施設栽培では、あまり天候に左右されず、安定した収穫量と品質が見込める。
  • 機械の利用により、作業の負担を小さくできる。

デメリットとして、以下のことが挙げられます。
  • 設備・機械の購入・維持にコストがかかる。
  • 農薬や化学肥料を購入する必要がある。
  • 農薬や化学肥料が作業者の健康を害する恐れがある。
  • 農薬や化学肥料の大量使用による、環境汚染の懸念がある。




有機農法


有機農法は、自然のしくみに逆らわない方針の農法で、輪作、緑肥、堆肥、微生物疾病制御といった手法によって、動植物の生命力を活用します。

有機農法では基本的に、化学肥料や化学合成農薬(以下、農薬)、遺伝子組換え技術は利用しません。

ただし、日本農林規格(JAS規格)の有機食品の認証制度(有機JAS認証制度)では、天然由来無機物による肥料の使用は認められていますし、やむをえない場合に限っては、30種類の農薬の使用が認められています。

また、特例として、遺伝子組換え作物に由来する有機質肥料である堆肥を有機栽培に用いることが許可されています。

有機農法の概念は広く、実践手法によって、内容が異なります。

たとえば、堆肥について、下記の 3種類に大別できます。
  • 牛糞など、畜糞発酵堆肥(バーク堆肥)
  • ぼかし堆肥
  • 植物性堆肥

ぼかし堆肥とは、米ヌカ・もみ殻・油カス・骨紛など、数種類の有機質肥料に微生物資材を入れて発酵させた堆肥です。
窒素分が多く、即効性があります。

植物性堆肥とは、藁。草・落ち葉などに米ぬか・油カスなどを混ぜ、腐葉土を加えて発酵させた堆肥です。

なお、化学肥料も堆肥も使用しない、「無肥料栽培」という手法があります。

無肥料栽培でも、畑で刈った雑草や作物残渣等を草マルチとして使用することは珍しくありませんし、人によっては、他所から竹枝や藁などを畑に持ち込みます。
こうした手法を用いる場合、草マルチなどが土と同化すまでには長い時間がかかりますが、養分補給するという意味では有機農法の一種といえるかもしれません。

無肥料栽培で、作物残渣や雑草等は畑の外に出し、畑に有機資材を持ち込まない場合、有機農法とは全くの別物ということになるでしょう。



自然農法


自然農法とは、自然環境の状態に近い条件で農作物を栽培しようとする方法です。
手法的には有機農法の一種といえます。

農薬や肥料の使用については厳格派で、有機JAS認証制度で使用が認められた肥料や農薬についても全く使用しない人が多数存在しています。

「自然農法=無肥料栽培」ということではなく、落ち葉や枯れ草を自家発酵させて堆肥とする人もいます。

その他の事柄についても、自然農法の実践者によって、やり方は様々です。

農地を耕すか否かについては、現在は不耕起栽培が主流ですが、耕起を行う人もいます。
除草を全く行わない人もいますが、人力による草抜きや草刈りを行う人もいます。

なお、無肥料栽培の場合でも、農作物の残りや落ち葉などをマルチとして畑に置くなど、何らかの形で田畑に養分補給を試みるのが一般的です。



炭素循環農法


炭素循環農法は、自然農法の一種で、無農薬・無肥料で農産物を栽培する方法です。

原則として化学肥料も堆肥も使用せず、チップや生の雑草など、分解しにくい有機物を土壌の中に入れ、微生物の働きで有機物を分解させて、田畑に養分を補給していきます。

有機物を土壌に入れる場合、注意するべき点が C/N比(Carbon to nitrogen ratio)です。
C/N比とは、有機物などに含まれている炭素(C)量と窒素(N)量の質量比で、「炭素率」とも言います。

炭素が多い有機物を土に施すと、窒素が微生物に取り込まれ、作物の利用できる窒素が少なくなって、窒素飢餓に陥ります。

有機農法では通常、窒素飢餓を回避するため、有機物の大量投入や未完熟の堆肥の使用を避け、C/N比が 20~30以下になるようにしています。

炭素循環農法の場合、稲わらや樹皮など、C/N比 40以上の高炭素有機物を浅く土壌にすき込み、ゆっくり発酵分解させることによって、窒素飢餓を回避させようとします。

通常の有機農法に比べ、炭素循環農法は速効性で劣りますが、環境保全の観点では魅力があります。



施設園芸


施設園芸とは、ビニールハウスなどの施設を利用して、野菜や果実、草花などを栽培する方法です。

単に雨が農産物にかかるのを避ける目的で行われる場合もありますが、冷暖房設備による温度制御、照明や遮光フィルムによる光環境制御など、様々な設備の利用によって、植物の成長をコントロールしようとする手法もあります。

施設栽培では、設備の導入・運用に費用がかかります。
作物の成長を最適に制御することにより、ある程度、生産効率を高めることは出来ますが、施設栽培は通常、作物を屋外で栽培する露地栽培(ろじさいばい)に比べ、生産コストが高くなります。

ただ、施設園芸では、収穫時期を人為的にコントロールできるメリットがあり、有利な条件で販売できる時期を狙って栽培するやり方もあります。





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